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ルピナス・ムタビリス

ルピナス・ムタビリスルピナス・ムタビリス
ルピナス・ムタビリス
品種:‘サンライズ(Sunrize)’


マメ科 ルピナス属(ハウチワマメ[葉団扇豆]属)
学名Lupinus mutabilis Sweet. 写真は、おそらく var. cruckshankii Hook.
英名

South American lupine, Andean lupin, changing lupin, pearl lupine, tarhui, tarwi
(某海外の辞典ではlupinlupineの両方があって、特に規則性はないようです)

和名ザッショクノボリフジ(雑色昇藤)
別名 
花言葉貪欲、空想、母性愛(ルピナス属の花言葉)
メモ

 属名はオオカミを意味するラテン語の「lupus」が由来のようですが、オオカミのようにどんな土地でもはびこることを意味すると説明されています。ルピナス属は300種からなり、その多くは北アメリカ西部に分布しているそうです。

 園芸品種の他、家畜用の飼料に使われている物もあるようですが、西洋ではビールのつまみにしたり、薬草としても用いられていたことがあったそうです。

追記(2002.3.10.)
 写真は国内某メーカーから通販で購入したもので、これまで種小名不明のまま公開していましたが、写真を差し替えたついでに改めて調べました。
 まず、T&Mのカタログ2001年版に、‘Sunrise’という、写真と同じ品種名で、花色は濃いルピナスが載っていて、学名は、「L. hartwegii ssp. cruickshankii」となっていました。次に、図鑑ですが、「コンパクト版・園芸植物大辞典(小学館.1994年)」に、この写真とよく似たルピナスが、ザッショクノボリフジ(学名・L. mutabilis Sweet.)と言う名前で記載されていました。また、「最新園芸大辞典vol.7(誠文堂新光社.1983年;以下、誠と略)」と「The New Royal Horticultural Society Dicyionary of Gardening Vol.3 (Macmillan Reference LTD. 1999年;以下RHS)」に写真無しの説明だけですが、「L. mutabilis」の変種として、それぞれ「var. cruckshankii Hook.」と「var. cruckshanksii (Hook.) L. H. Bail.」という学名が載っていました。そこで、おそらくは、「L. hartwegii」か「L. mutabilis」どちらかの種の「cru(i)ckshank(s)ii」という亜種または変種だろうと的を絞って、特徴の比較をしました。図鑑によって若干の違いがありましたが、以下の表では特に断りのない限り、「誠」によります。

 L. hartwegiiL. mutabilis写真のルピナス
草丈60〜90cm1〜1.5m約60cm
茎・枝粗毛あり。分枝は少ない(誠)あるいは多い(RHS)無毛。分岐性無毛。現時点で、上部の腋芽が側枝に発達中
小葉7〜10枚。長さ5〜7cm7〜11枚。長さ5〜7.5cm
葉に葉柄がある
およそ10枚。
葉柄がある
花序多くは互生(時に不明瞭に輪生)下部は輪生、上部は互生輪生
1.3cm1.8cm
一般に日が経つと花色が変わるものが多い。
2.0cm以上
日が経つと色が変わる
莢果2.5〜3cm。有毛5〜7.5cm現時点で、不明
種子3mm8mm7mm
その他原産はメキシコ原産はアンデス(ボリビア)。変種はペルータネの説明書によると、原産は北米。ラッセル種に近い。

 草丈が短いですが、タネの説明書によると1mくらいになるらしく、それ以外の特徴から、写真のルピナスは、L. mutabilis と判断しました。また、変種の特徴(旗弁は初め白色で縁が青く、ぼかしとなり中心黄色、後に紫色。翼弁は藍色)が図鑑と一致したので、学名、英名、和名を上記のように書き改めました(「RHS」ではなく「誠」を採用)。種の同定が間違っていたら、すみません。なお、タネが入っていた袋に書いてあった説明によるとラッセル種(L. polyphyllus hybrid)に近いと言うことでしたが、図鑑に書いてあったラッセル種の特徴(花の大きさ、種子の大きさ、花の着き方等)とは一致しませんでした。以下は、資料の都合により、変種ではないL. mutabilis の説明をします。

 種小名の「mutabilis」は「変化しやすい」という意味で、花の色が変わることに由来するそうですが、実際、日が経つと、旗弁が青色(写真右)から紫色(写真左上)に変わります。

 先にも書いた通り、ルピナス属には約300種があるそうですが、その中で栽培植物化されているのはたった4種で、そのうちの一種がL. mutabilisだそうです。その4種の中では、種子に含まれているタンパク質とオイルの量が最も多く(それぞれ、40〜50%、14〜24%)、タンパク質の消化性と栄養価はダイズのタンパク質に匹敵するとも、量的にはダイズを上回るとも言われています。また、種子に含まれるタンパク質は、必須アミノ酸であるシステインやリジンに比較的富むようです。同じルピナス属のL. albusと比較した実験によると、窒素、タンパク質、グロブリン含量は多いものの、アルブミン含量は少ないそうです。ただし、ある文献によると、家畜の飼料用に栽培されているらしく、人間の食糧になるかどうかは分かりません。

 開花の早晩は、日長時間が12.5〜14.5時間の間であれば差がないそうですが(実際の自然環境に合わせて、11.5〜14.5時間の間で調査したそうですが、個人的には、幅が狭い気がします。なお、本来は長日性らしいです)、温度には影響を受け、推定の最適温度はおよそ22℃で、27℃のような高温になると、花の発育停止が起こるそうです。


本棚以外の参考文献
  • Keating, J. D. H., et al. Effect of temperature and photoperiod on phenology as a guide to the selection of annual legume cover and green manure crops for hillside farming systems. Feild Crop Research. 57: 139-152. 1998.

  • Santos, C. N., et al. Seed proteins of Lupinus mutabilis. Journal of Agricultural & Food Chemistry. 45: 3821-3825. 1997.(主にイントロダクションと結果の一部からの引用です。)

コメント

 東北地方のような寒冷地では春播きが良いそうですが、9月半ば過ぎに播種し、無加温温室で育てていました。11月になって気温が下がるようになってから下の葉から黄色くなってきたので、加温した温室に移して栽培したところ、11月下旬に開花しました。促成栽培(?)のせいか、貧弱です(^^;(2000.12.3.)

もう一言(2002.3.10.)
 写真差し替えにつき、これまで公開していた写真は削除しました。ご了承下さい。
 種の同定は前述の通りですが、本当ならルピナス属の他の種とも比較するべきかもしれません。雑種の可能性もありますし。一株しか調べられなかったのも反省点です。海外のサイトで、写真はありませんでしたが、L. polyphyllusの‘Sunrise’も見かけました。

 昨年、失敗したので、ちゃんと咲かせるまでは、と言うことでチャレンジしてみました。東北では春播き出来るらしいので、5月半ば過ぎに試してみましたが、5日後に発芽したものの夏越しに失敗しました。そこで、改めて昨年の10月上旬に秋播きしたところ、およそ1週間後に発芽し、無加温の温室内で栽培していたら今年の2月半ばに最初の花が咲きました。
 昨年は加温している温室に入れて十分に低温に当てなかったせいか、花序の中の花数が3〜4花程度と少なく色白でしたが(写真左下)、今年は昨年よりは良好で、花数が増えました(写真右)。でも、貧弱という感じは否めませんでした。一昨年と同じように9月頃にタネを播いていれば、涼しくなる前に十分成長できて、もっと大きく育っていたかもしれません。花序は光が射す方向に曲がってしまうらしく、鉢を回しているうちに変な風に曲がってしまいました(^^;。気温が低いせいか、花は比較的長持ちしました。
 涼しいところで育てていると葉が枯れてボロボロ落ちるし、だからと言って保温すると花が着かなくなるしで、ルピナスの栽培は難しいです。

 
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