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アブチロン属


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アブチロン・ヒブリドゥム      
アブチロン・ヒブリドゥム
(× hybridum
     

アオイ科Malvaceae
学名Abutilon Mill.
和名イチビ属
英名flowering maple, parlour maple, Indian mallow
分布熱帯〜温帯(アメリカ、アフリカ、アジア、オーストラリア)
種数100種、あるいは、150種
属名の性別中性

属名の由来

1)マロウかアブチロンのある種のアラビア名
2)ギリシャ語の「a(〜がない)+bous(牝牛)+tilos(下痢)」で、家畜の下痢を止める効果があると考えられていたことから。

メモ

名前について
 属名の由来の1)は「The New RHS Dictionary of Gardening」(マロウ説)、「CRC World Dictionary of Plant Names」(アブチロン説)、2)は「園芸植物大事典」、「最新園芸大辞典」によります。


形態・生態・栽培など
 多年生の低木、小木です。草本性の種もあるそうです。葉は切れ込みがないか、3、5、7裂しています。葉の縁は、円鋸歯状、歯状、鋸歯状です。葉の斑入りは、アブチロンモザイクウイルスの感染が原因だと言われています。花は葉腋に一つだけ着きますが、複数の花が着く場合は、集散花序か円錐花序を形成します。副萼はありません。萼は5裂しています。花弁は5枚です。雄しべは複数で、雄ずい筒を形成しています。花柱は5つ〜多数で、雄ずい筒に囲まれています。果実は分離果です。染色体数はn=7、8、14、21だそうです。
 水捌けの良い沃地を好みます。十分に日が当たるか、部分的に影が出来るところが良いそうです。また、夏は直射日光を避けると良いそうです。耐寒性は、種によって異なり、一般には、最低気温を5〜7℃以上(あるいは、10℃以上)に保つ必要があるそうですが、耐寒性がある種では−5〜−10℃のような低温にも耐えることが出来るそうです。長年栽培し続けると、徒長したり、花数が少なくなったりすることから、毎年か一年おきに挿し木をして更新すると良いそうです。


種類など
 種数は、150種としているのは「The New RHS Dictionary of Gardening」です。他の資料では、約100種とされています。一部の種を以下に挙げます。

A. asiaticum (L.) Don.
A. cryptopetalum (F. Muell.) F. Muell ex Benth.
A. esculentum A. St-Hil.A. purpurascens の異名とされることもある)
・タカサゴイチビ(A. indicum (L.) Sweet
A. insigne Planch
A. longicuspe Hochst. ex A. Rich.
・ウキツリボク(チロリアンランプ;A. megapotamicum (Spreng.) St.-Hil. et Naudin.
A. menziesii Seem.
A. mollissimum (Cav.) Sweet
A. oxycarpum F. Muell.
A. purpurascens (Link) Schum.
・ショウジョウカ(正名:A. pictum (Gillies ex Hook. et Arn.) Walp.、異名:A. striatum G. Dickson ex Lindl.
  キフアブチロン(var. thompsonii Veitch、あるいは、ショウジョウカの園芸品種で‘Thompsonii’)
・イチビ(別名:キリアサ;正名:A. theophrasti Medik.、異名:A. avicennae Gaertn.
アブチロン(A. × hybridum hort.


分類など
 アオイ科の植物は約110属・2300以上の種があると言われています。属は、Decaschistieae連、Gossypieae連、Hibisceae連、Malvavisceae連、Malveae連の5つの連(科と属の間の分類)に大別されるそうです。このうち、Malveae連には70属が含まれ、更にいくつかの alliance(「群団」の意。アオイ科植物の分類をした Bates氏らが用いた語。学術的に認められた分類ではなく、和訳は不明。以下、アリアンスとします)に分類することが出来るそうです(アリアンスに分類する方法には異論があり、亜連に分類する方法もあります)。アブチロン属は、シダ属(Sida、キンゴジカ属)等とともに、14の属から成る Abutilonアリアンスを構成しているそうです(亜連に分類する場合は、Abutilinae亜連とされています)。
 アオイ科植物のいくつかの種について、葉緑体DNAを用いて系統樹を作ったところ、アブチロン属のイチビと、シダ属のS. spinosa は、一つのクレード(clade:共通の祖先から進化した生物のグループ)にまとまり、Abutilonアリアンスは妥当であることが確かめられたそうです。ただし、イチビ以外のアブチロン属の種と S. spinosa 以外のシダ属の種については調査されていないので、属のレベルで近縁かどうかは分かりません。なお、Abutilonアリアンスは、他の Malveae連のアリアンスで形成されるクレードと近縁で、Malveae連は一つのクレードとしてまとまることが明らかになったそうです。ただし、これについても、調査されてる種が少ないので、もっと増えたら、クレードにまとまらない種も出てくるのでは?と言う疑問があります。


本棚以外の参考文献
  • CRC World Dictionary of Plant Names -Common names, scientific names, eponyms, synonyms, and etymology. CRC Press. 2000.(英名)

  • Hanelt, P. Mansfeld's Encyclopedia of Agricultural and Horticultural Crops. 1621-162. Springer. 2001.

  • Duke, J. C. L. A Chloroplast DNA based phylogeny of the Malvacea. Systematic Botany. 20: 259-271. 1995.

(2005.2.20.)
 
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