名前について
英名の chickweed は、ケラスティウム属の他、同じナデシコ科のハコベ属(Stellaria L.)や、サクラソウ科のツマトリソウ属(Trientalis L.)の英名でもあります。ちなみに、chick は、ヒヨコ、ヒナ、子供などのことで、weed は、雑草のことです。mouse-ear は「ネズミの耳」ですが、細かい毛に覆われた葉を例えたものと思われます。ラムズイヤー(lamb's ear;ヒツジの耳)と同じ発想ですね。ちなみに、学名が「ネズミの耳」を意味するミオソティス属もあります。 和名のミミナグサは漢字で「耳菜草」と書き、由来は、「mouse-ear chickweed」と同じで、葉がネズミの耳に似ていることと、食用になることによると言われています。日本で独自に付けた名前がたまたま英名と同じ由来だったのか、英名を和訳したのかは、分かりませんでした。
形態・栽培など
耐寒性がある一年草か多年草です。稀に、やや木本性の物もあるそうです。普通、毛に覆われています。葉は披針形で対生しています。花は、単生するか、集散花序を形成します。萼片は5枚で、離生してます。花弁は普通5枚で白色、先端が二裂しているか、深いギザギザが入る種もあるそうです。雄しべは10本以下だそうです。花柱は普通5本ですが、稀に、3本か4本のこともあるそうです。果実は円筒状の刮ハです。 繁殖は、実生か株分けによります。花が終わった後に挿し芽をすることも出来るそうです。日当たりが良く、乾燥気味の場所を好むそうです。さらに、肥沃ではない土壌では、毛の生える性質が顕著に現れるそうです。成長が著しく強い種では、花が終わった後に、剪定すると良いそうです。
種類など
種数は上記の通り100種だそうですが、これより少なく見積もられていることもあります。ケラスティウム属植物は多様性があって分類が難しいそうなので、種数に幅があるのは、そのせいなのかもしれません。日本には、6種ないし、5種4変種が自生していると言われています。一部の種を以下に挙げます。
・C. alpinum L.
タカネミミナグサ(高嶺耳菜草;var. beeringianum Regel.)
・セイヨウミミナグサ(西洋耳菜草;C. arvense L.)
アオモリミミナグサ(青森耳菜草;var. japonicum Hara)
・C. fontanum Baumg.
ssp. vulgare (Hartman) Greuter et Burdet
・オランダミミナグサ(C. glomeratum Thuill.)
・タイリンミミナグサ(大輪耳菜草;C. grandiflorum )
・C. holosteoides Fries
ミミナグサ(耳菜草;var. hallaisanense (Nakai) Mizushima、あるいは、var. angustifolium Mizushima)
・タガソデソウ(誰が袖草C. oxalidiflorum Makino)
・ミヤマミミナグサ(深山耳菜草;C. schizopetalum Maxim.)
・オオバミミナグサ(大葉耳菜草;C. schmidtianum Takeda)
・ホソバミミナグサ(細葉耳菜草;C. takeda Hara)
・シロミミナグサ(白耳菜草;C. tomentosum L.)
var. columnae (Ten.) Arcang.
分類、その他
Scheen氏らが、57種について分子生物学的に系統を調べた研究があります。これによると、ケラスティウム属の起源は旧世界(ヨーロッパ、アジア)で、そこから、少なくとも2度にわたって、北アメリカ大陸に渡ったことが推察されたそうです。また、47種については、2つの亜属(Dichodon亜属と Eucerastium亜属)に分類されることが分かったそうです。なお、従来は、Eucerastium亜属は3つの節に細分されるとされていたそうですが、この研究からはその説を支持する結果は得られなかったそうです。
本棚以外の参考文献
牧野富太郎.原色牧野植物大圖鑑.北隆館.1982年.
牧野富太郎.原色牧野植物大圖鑑・続編.北隆館.1983年.
大井次三郎.ミミナグサ.世界の植物.1783〜1785ページ.朝日新聞社.1977年.
Scheen, A.-C., et al. Northern hemisphere biogeography of Cerastium (Caryophyllaceae): Insights from phylogenetic analysis of noncoding plastid nucleotide sequences. American Journal of Botany. 91: 943-952. 2004.
(2004.12.25.)
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