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オダマキ属


このサイトで紹介している種

セイヨウオダマキ 交雑種    
セイヨウオダマキ
vulgaris
交雑種
hybrida
   

キンポウゲ科Ranunculaceae
学名Aquilegia L.
和名オダマキ属
英名columbine, granny's bonnet
分布北半球の温帯、特に山地
種数約50〜80種(資料によって異なります)
属名の性別女性

属名の由来

 学名は、ラテン語の「aquila(ワシ)」に由来し、距の形がワシの爪か嘴の形状に似ていることに因むとも、ラテン語の「aqua(水)+lego(集める)」に由来し、距に蜜が溜まることに因むとも言われている。
 和名は、苧環(中空になるように麻糸を巻いたもの)に花の形が似ていることから。なお、漢字表記は他に、「苧手巻」、「小田巻」がある。古名の「いとくり」も花の形が似ていることに因む。

花言葉愚かなこと、偽善、戯れ、他
メモ

英名について
 英名の「columbine」は、ラテン語の「columba(ハト)」に由来するそうですが、蜜腺(距?)の形が、ハトの頭に似ていることに因むそうです。


形態・生態・栽培など
 耐寒性が強い多年草ですが、2〜3年と短命だそうです。茎は直立します。葉は、3出複葉が構成単位となり、下位の葉では、これが更に3出複葉を1〜2回繰り返します。下位の葉には長い葉柄があります。花は頂生します。萼片は花弁状で、5枚あります。花弁は5枚で距があり、距は萼片の間から後方に伸びます。距は中空で、蜜を分泌します。雄しべは50本以上になることがあり、5列に輪生するそうですが、内側の雄しべは稔性がないそうです。心皮(雌しべを構成する花葉)は5枚、時に10枚で、離生しています。果実は袋果で、成熟時には上を向きます。
 種間交雑しやすいそうです。花粉は、ハエ、ハチ、スズメガ、ハチドリ等によって媒介されるそうです。繁殖は、実生か株分けで行いますが、前述の通り、短命なので、種子で繁殖する方が良いそうです。種子は、春播き、秋播きともに可能で、株分けは、3〜4月に行うと良いそうです。種子は保存性が悪く、貯蔵した物は発芽し難くなるそうです。播種の適温は20℃前後と言われています。緑植物体春化型で、花芽分化するためには、ある程度大きく育った株が低温に遭遇する必要がありますが、園芸品種の中には、花芽分化に春化を必要としない物もあります。春化を必要とする物は、春に播種をすれば、大抵、翌年の春に開花します。秋に播種をして、低温を感受できるまでに育っていない株に低温を当てても、翌年に開花することはありません。この場合の開花は、その次の年になります。陽当たりが良いところを好みますが、耐暑性が弱いため、夏は半日陰で風通しが良いところに置くと良いそうです。土壌は、粘土は向かないそうで、保水性があり、排水が良く、有機質を多く含む物を好むそうです。


種類など
 種数は上記の通りです。日本で栽培されている主な種として、以下に挙げる物があるそうです。

A. alpina L.
・ヤマオダマキ(A. buergeriana Sieb. et Zucc.
  オオヤマオダマキ(別名:エゾヤマオダマキ;var. oxysepala (Trautv. et C. A. Mey.)
A. caerulea James
・カナダオダマキ(A. canadensis L.
・キバナオダマキ(A. chrysantha A. Gray
A. discolor Levier et Leresche
・フウリンオダマキ(正名:A. ecalcarata Maxim.、異名:Semiaquilegia ecalcarata Maxim.
・オダマキ(正名:A. flabellata Sieb. et Zucc.、異名:A. japonica Nakai et Hara
  ミヤマオダマキ(var. pumila (Huth) Kudo、異名:A. akitensis Huth
A. formosa Fisch.
A. grata F. Maly ex Zimm.
A. longissima A. Gray
・クロバナオダマキ(A. viridiflora Pall.
セイヨウオダマキ(A. vulgaris L.
交雑種(A. hybrida hort.(「hort.」の代わりに「Sims」としている文献もあります。)


分類など
 オダマキ属の分類法はいくつかあるようですが、Grant氏は、花の形態によって以下の5つのグループに分類したそうです。

  1. A. ecalcarata(フウリンオダマキ)
     オダマキ属の中で、唯一距がない種。ヒメウズ属(Semiaquilegia)に属するとされることがあるようですが、近年、分子系統学的手法により、セイヨウオダマキや A. aurea と近縁で、オダマキ属に含まれることが明らかにされました。

  2. the Vulgaris group(ウルガリス・グループ)
     下向きの青か紫色の花で、距は短く先端は鉤爪状に曲がり、花弁は長い。
     花粉を媒介するのは、マルハナバチ。
     セイヨウオダマキ

  3. the Alpina group(アルピナ・グループ)
     距の形態が、鉤爪状に曲がっていると言うより、むしろ、真っ直ぐである点を除けば、ウルガリス・グループと同じ。
     A. atrata

  4. the Canadensis group(カナデンシス・グループ)
     下向きの赤と黄色の花で、距は短く、真っ直ぐで、太く、花弁は短い。
     花粉を媒介するのは、ハチドリ、ハチ
     カナダオダマキ、A. formosaA. elegantula

  5. the Caerulea groupthe Coerulea group](カエルレア・グループ[コエルレア・グループ])
     上向きの白か黄色か青い花で、距は真っ直ぐで長い。花弁は長い。
     花粉を媒介するのはハチドリ、マルハナバチ、スズメガ
     キバナオダマキ、A. pubescensA. caeruleaA. micrantha

 オダマキ属はユーラシア大陸で進化し、鮮新世の中期(約350万年前)に北アメリカに広まったと考えられるそうです。また、旧世界(ユーラシア大陸)ではハチが花粉を媒介したのに対し、ハチドリによる花粉の媒介はより新しい時代に進化したと推定されているそうです。
 また、ITS の配列を解析した結果、

  1. 北アメリカ原産のオダマキ属植物は、同一の祖先を起源とするグループにまとまること。

  2. 分布以外の、花粉の媒介者、花色、習性のような分類上の特徴は、共通の祖先に由来せず、類似の条件下で独自に生じたものであること。

が明らかになったそうです。


本棚以外の参考文献
  • Watts, D. C. Elsevier's Dictionary of Plant Name and Their Origin. Elsevier. 2000.

  • 塚本洋太郎.原色園芸植物図鑑〔II〕・改訂版.保育社.1972年.

  • Hodges, S. A., et al. Verne Grant and evolutionary studies of Aquilegia. New Phytologist. 161: 113-120. 2003.

  • Ro, K.-E., et al. Molecular phylogeny of the Aquilegia group (Ranunculaceae) based on internal transcribed spacers and 5.8S nuclear ribosomal DNA. Biochemical Systematics & Ecology. 25: 445-461. 1997.

(2004.7.4./最新の更新:2004.7.10.)
 
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