名前など
漢字で罌粟、芥子と表記します。罌粟(おうぞく)は、果実の形が罌(瓶)の形に似ていて、種子が粟に似ていることに由来するそうです。また、芥子(かいし)は、カラシナそのものやカラシナの種子のことを指すそうですが、種子が似ていることから転用されたそうです。 なお、ただ単にケシと言ったら、阿片が取れることで知られている P. somniferum(ソムニフェルム;オピウムポピー)のことを指します。
形態・生態・栽培など
一年草、多年草だそうですが、二年生の種もあるそうです。直根性で、栽培する際は直播きをすると良いそうです。ほとんどの種が有毛で、無毛の種はあまりないようです。なお、文献によっては、観賞用の種は有毛で、無毛の薬用種と容易に区別できると説明されています(薬用にも利用できるヒナゲシは有毛ですが)。白色か黄色の乳汁を含みます。花は単生します。萼片は2枚ですが、稀に3枚あることもあるそうです。花が咲くときに落ちます。花弁は4枚ですが、稀に5、6枚あることもあるそうです。雄蕊は多数あります。雌蕊は花柱がなく、柱頭の表面は盤状で、子房上に4〜16本の放射線状に並んでいます。果実は刮ハで、球形、もしくは、円柱状です。 日本で主に栽培されているのは、ヒナゲシ、アイスランドポピー、オリエンタルポピー(オニゲシ)です。日当たりが良く、排水がよい場所(過湿にならないような場所)を好むそうです。ヒナゲシ、オリエンタルポピーは、移植を嫌うそうです。概略は以下の通りです。
| ヒナゲシ | アイスランドポピー | オリエンタルポピー |
園芸的分類 | 秋播き一年草 | 秋播き一年草 (本来は多年草) | 二年草、あるいは、 多年草(本来は多年草) |
発芽適温 | 15〜17℃ | 15℃ | |
播種適期 (地域によって 異なります) | 9〜10月 | 9月上〜中旬、あるいは、 10月中旬過ぎ | 4〜5月、秋播きも可 |
播種 | 直播き | 移植する場合は 苗が小さいうちに行う。 | 直播き |
開花期 | 5〜7月 | 3〜5月 | 5〜6月 |
その他 | | | 株分け、根挿しで 増殖できる。 |
立ち枯れ病が出る恐れがあるので、連作を避ける |
利用・薬効など
果皮や花弁にアルカロイドが含まれています。ケシのようにモルヒネ(morphine)を含む種の栽培は、日本では一般には禁止されています。阿片は、ケシの果皮を傷つけて出てくる乳汁を採取して作ります。 種子(ポピーシード)には麻酔性の成分は含まれておらず、食用(主に香り付け用)になります。「ハーブ図鑑500」や「ハーブ スパイス館」によると、ケシの種子が利用されているようです。
種類など
種数は上記の通りで、日本には、利尻島にリシリヒナゲシ1種が自生しているそうです。和名が付いているものを以下に挙げます。以下に記載した学名は、主に「The New RHS Dictionary of Gardening」に記載されていたものを参考にしました。和名は主に「園芸植物大事典」を参考にしましたが、図鑑によって異なる場合があります。
・ミヤマヒナゲシ(別名:タカネヒナゲシ;P. alpinum L.)(※1)
・ハカマオニゲシ(袴鬼罌粟;P. bracteatum Lindl.)(※2)
・リシリヒナゲシ(利尻雛罌粟;P. fauriei Fedde)(※3)
・アイスランド・ポピー(別名:シベリアヒナゲシ;P. nudicaule L.)
・チシマヒナゲシ(千島雛罌粟;P. miyabeanum)(※4)
・オリエンタル・ポピー(オニゲシ[鬼罌粟];P. orientale L.)
ボタンゲシ(牡丹罌粟;var. bracteatum (Lindl.) Ledeb.)(※5)
・ヒナゲシ(雛罌粟;P. rhoeas L.)
・ケシ(罌粟、オピウムポピー;P. somniferum L.)
※1:和名は「最新園芸大辞典」、「園芸植物図譜」によりますが、現在、P. alpinum はいくつかの種の総称とされ、この学名を用いるのは不適切とされているそうです。
※2:和名は「最新園芸大辞典」、「世界有用植物事典」によりますが、「園芸植物大事典」では、この学名はボタンゲシの異名とされています。
※3:利尻島原産。「世界有用植物事典」と「世界の植物」で、日本産としている種。
※4:千島原産。「日本に1種」と記述している「最新園芸大辞典」に記載。
※5:「最新園芸大辞典」では、ボタンゲシの学名は P. paeoniflorum hort.
日本産はリシリヒナゲシ1種とのことですが、千島産のチシマヒナゲシという種もあるようです。日本産は2種あると言うことでしょうか?
本棚以外の参考文献
(2003.7.12.)
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