このページ内の文章・画像の転載を禁止します

ケシ属


このサイトで紹介している種

アイスランドポピー ヒナゲシ    
アイスランドポピー
nudicaule
ヒナゲシ
rhoeas
   

ケシ科Papaveraceae
学名Papaver L.
和名ケシ属
英名poppy
分布ヨーロッパ、アジア、オーストラリア、南アフリカ、北アメリカ西部
種数50〜100種(資料によって異なります)
属名の性別中性

属名の由来

属名はラテン語の「pappa(食べ物、ミルク)」に由来し、含まれている乳液に因む。また、種子を噛む音に由来するとも、パプ(pap:古代ケルト語でパン粥の意)にケシの絞り汁を入れて睡眠薬にしたことに由来するとも言われている。これら以外にも諸説がある。

花言葉慰め、忘却、眠り、怠惰、無気力、疑惑、他
メモ

名前など
 漢字で罌粟、芥子と表記します。罌粟(おうぞく)は、果実の形が罌(瓶)の形に似ていて、種子が粟に似ていることに由来するそうです。また、芥子(かいし)は、カラシナそのものやカラシナの種子のことを指すそうですが、種子が似ていることから転用されたそうです。
 なお、ただ単にケシと言ったら、阿片が取れることで知られている P. somniferum(ソムニフェルム;オピウムポピー)のことを指します。


形態・生態・栽培など
 一年草、多年草だそうですが、二年生の種もあるそうです。直根性で、栽培する際は直播きをすると良いそうです。ほとんどの種が有毛で、無毛の種はあまりないようです。なお、文献によっては、観賞用の種は有毛で、無毛の薬用種と容易に区別できると説明されています(薬用にも利用できるヒナゲシは有毛ですが)。白色か黄色の乳汁を含みます。花は単生します。萼片は2枚ですが、稀に3枚あることもあるそうです。花が咲くときに落ちます。花弁は4枚ですが、稀に5、6枚あることもあるそうです。雄蕊は多数あります。雌蕊は花柱がなく、柱頭の表面は盤状で、子房上に4〜16本の放射線状に並んでいます。果実は刮ハで、球形、もしくは、円柱状です。
 日本で主に栽培されているのは、ヒナゲシ、アイスランドポピー、オリエンタルポピー(オニゲシ)です。日当たりが良く、排水がよい場所(過湿にならないような場所)を好むそうです。ヒナゲシ、オリエンタルポピーは、移植を嫌うそうです。概略は以下の通りです。

 ヒナゲシアイスランドポピーオリエンタルポピー
園芸的分類秋播き一年草秋播き一年草
(本来は多年草)
二年草、あるいは、
多年草(本来は多年草)
発芽適温15〜17℃15℃ 
播種適期
(地域によって
異なります)
9〜10月9月上〜中旬、あるいは、
10月中旬過ぎ
4〜5月、秋播きも可
播種直播き移植する場合は
苗が小さいうちに行う。
直播き
開花期5〜7月3〜5月5〜6月
その他  株分け、根挿しで
増殖できる。
立ち枯れ病が出る恐れがあるので、連作を避ける


利用・薬効など
 果皮や花弁にアルカロイドが含まれています。ケシのようにモルヒネ(morphine)を含む種の栽培は、日本では一般には禁止されています。阿片は、ケシの果皮を傷つけて出てくる乳汁を採取して作ります。
 種子(ポピーシード)には麻酔性の成分は含まれておらず、食用(主に香り付け用)になります。「ハーブ図鑑500」や「ハーブ スパイス館」によると、ケシの種子が利用されているようです。


種類など
 種数は上記の通りで、日本には、利尻島にリシリヒナゲシ1種が自生しているそうです。和名が付いているものを以下に挙げます。以下に記載した学名は、主に「The New RHS Dictionary of Gardening」に記載されていたものを参考にしました。和名は主に「園芸植物大事典」を参考にしましたが、図鑑によって異なる場合があります。

・ミヤマヒナゲシ(別名:タカネヒナゲシ;P. alpinum L.)(※1
・ハカマオニゲシ(袴鬼罌粟;P. bracteatum Lindl.)(※2
・リシリヒナゲシ(利尻雛罌粟;P. fauriei Fedde)(※3
アイスランド・ポピー(別名:シベリアヒナゲシ;P. nudicaule L.
・チシマヒナゲシ(千島雛罌粟;P. miyabeanum)(※4
・オリエンタル・ポピー(オニゲシ[鬼罌粟];P. orientale L.
  ボタンゲシ(牡丹罌粟;var. bracteatum (Lindl.) Ledeb.)(※5
ヒナゲシ(雛罌粟;P. rhoeas L.
・ケシ(罌粟、オピウムポピー;P. somniferum L.

※1:和名は「最新園芸大辞典」、「園芸植物図譜」によりますが、現在、P. alpinum はいくつかの種の総称とされ、この学名を用いるのは不適切とされているそうです。
※2:和名は「最新園芸大辞典」、「世界有用植物事典」によりますが、「園芸植物大事典」では、この学名はボタンゲシの異名とされています。
※3:利尻島原産。「世界有用植物事典」と「世界の植物」で、日本産としている種。
※4:千島原産。「日本に1種」と記述している「最新園芸大辞典」に記載。
※5:「最新園芸大辞典」では、ボタンゲシの学名は P. paeoniflorum hort.

 日本産はリシリヒナゲシ1種とのことですが、千島産のチシマヒナゲシという種もあるようです。日本産は2種あると言うことでしょうか?


本棚以外の参考文献
  • 堀田満ら編集.世界有用植物事典.平凡社.1989年.

  • 清水建美.リシリヒナゲシ.世界の植物.1472ページ.1977年.

(2003.7.12.)
 
HOME   植物名一覧

このページ内の文章・画像の転載を禁止します