え り も 好 き !









夫アザラシの 朝の食卓


北海道新聞のコラム欄「朝の食卓」で、今年一年間、月に一回原稿を出しています。北海道以外の方にも、読んでいただきたいと思い、ここで紹介します。


1998年1月9日 ・ 襟裳岬に住んで

襟裳岬に移り住んでから、今年で早いもので10年になる。襟裳岬を最初に訪れたのは、大学時代に誘われて参加したゼニガタアザラシの調査の時だった。調査は、一週間、日の出から日没まで、30分ごとに沖の岩礁に上がっているアザラシの数を調べるというものだった。
この調査に参加して、初めて野生のアザラシを見た時はとても感動したことを覚えている。しかし、そのことよりも、人の生活とは無縁の無人島などではなく、多くの人が訪れる観光地で、望遠鏡を使えば簡単にだれでも野生のアザラシを見ることができる場所がまだ日本にあるという驚きのほうがおおきかった。
残念ながら、岬を訪れる人たちの多くは、そのことにまったく気付かないで帰ってしまう。「何もない」ということを確認して・・・。そこで、観察会を始めたのが大学二年のころからだ。岬の展望台に望遠鏡を立て、「アザラシ見えますよ」と言うことだけのものだった。それでも、たくさんの人がアザラシを見て、そして、そこに大きな自然があることに気付く。
ほんのちょっとした手助けや目線を変えるだけで見えなかったものが見えてくる。そんなことを、アザラシから教わった。私も、最近やっと訪問者の目線から、そこに住む人の目線に変わってきたような気がするのは気のせいだろうか。


1998年2月13日 ・ 海のハクチョウ

今年も、冬の使者ハクチョウが道内各地の川や湖に帰ってきた。えりもの海岸では、40〜50羽のオオハクチョウが春まで過ごしている。彼らは、数羽の幼鳥を含む5〜10羽のグループで行動している。
昼間は波間でアオサなどの海藻類を食べ、のどが渇くと沢の水を飲み、夜は浜辺に上がって丸くなって寝る。ほとんどのハクチョウが、波などのない穏やかな湖などを越冬地として選んでおり、条件の悪い外界で越冬するえりものハクチョウは年々減少している。
一方、苫小牧のウトナイ湖では、これまで行ってきた給餌方法の見直しを検討しているという。もともと湖は結氷してしまい、越冬するハクチョウはいなかった。それが、30年ほど前に給餌をはじめてから、年々数が増え続け、今では約300羽が越冬している。このため、給餌により本来の渡りのパターンを乱している可能性も出てきたためだ。
現在、各地で給餌が行われていて、その多くは観光客や人とハクチョウ(自然)とのふれあいを目的としている。でも、ハクチョウは本当に人の助けを必要としているのか、本来のハクチョウの姿とは・・・。人が近寄ると逃げ、冬の荒波にたくましく生きるハクチョウを見ながら思った。


1998年3月20日 ・ 風が吹けば・・・

襟裳岬に近い丘の上で、二基の白い風車が回っている。高さ35メートルのタワーに、15メートルの翼が三枚ついているデンマーク製の風車で、一昨年の六月に建てられた北海道で初めての商業用の発電所だ。二基の風車あわせて約500世帯分、800キロワットの電気をおこすことができる。昨年一年間では、174万キロワットの発電量があった。えりも町内へ供給された電力の約6.5%が風によって作られたことになる。最近では、この巨大な風車が昔からそこにあったかのように岬の風景に融け込んでいる気がするのは私だけだろうか。
現在道内でも、えりも以外に留萌、室蘭、苫前など各地で発電用の風車を建設するところが増えてきている。これまでは、「負」の要素として取り上げられることが多かった風が、「資源」としてみ直されはじめたからだ。欧米の各国では、温暖化防止などの地球にやさしいエネルギーとして風力発電を積極的に導入している。様々な課題もあるが日本でも、北海道でも、よりいっそうの普及を望みたいと思う。そのためにも、えりも岬の風車には、翼いっぱいに風を受けて、どんどん電気を作って、風力発電の可能性を示していってほしいと思う。風が吹くほど、地球の未来は明るい・・・。



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