MORROWIND プレイ日記

呪文剣士マジーム Majim のスチャラカ冒険記 その1


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◆ 前章

 俺の名はマジーム。
 生まれは北方、ノルド族 (NORD) のスペルソード (SpellSword) 。
 魔法使いの星の下に生まれたため占い師に育てられ、ノルド族では珍しい「まじない師」になった。
 だが、やはり一族の血は争えないもんで、呪文で手をかざすよりも先に大剣を振り下ろすことが多い。

 まじない師として食い詰めた俺は、帝国の辺境警備隊に志願した。
 ここは大した戦闘もないところで、時折起こる小競り合いの時は後詰めに入って、まじないで援護すればいい。 気楽な商売だ。

 ところがある日、大きな戦いが起こった。
 前衛どもは見ちゃおれぬくらいのヘッポコな剣さばきで、わが部隊はジリジリと押されてゆく。
 いくら俺がまじないの火花を飛ばして援護しようが、形勢は変わりゃしない。
 俺は腰の大剣を抜くと(心の中で)角笛を吹き鳴らし、雄叫びを上げて突っ込んでいった。

 ……………。 戦には勝利した。
 だが、前衛の兵たちは被害甚大。 辺境警備隊は、ほぼ全滅。
 俺は身に覚えのない、「前線を混乱させた」咎で、流罪になった。
 流刑地は、ここに書くのもはばかれるほど洒落にならないものだった。




◆ 種月16日 (1日目)

 船を下りると、そこはヴァーデンフェル (Vvardenfell) の最南端、セイダ・ニーン (Seyda Neen) 村だった。
 流刑地から、いきなり船に乗せられて着いたのが、此処だ。
 村の役人は「皇帝の命」によって俺が釈放されたのだ、と、のたまう。
 皇帝の印が押された書き付けを見ると、その通り。
 しかし何故、自由の身になったのか、皆目見当もつかない。

 村の役人から優しく経緯を聞き出そうと思ったのだが、これがいけなかった。
 俺は顔にノルド族特有の青い隈取りをしており、その笑顔は灰色熊も逃げ出すようなシロモノだったことだろう。
 ほとんど叩き出されるように、部屋を追い出された。

 仕方がないので、ぶらぶらと村役場をうろついていると、小部屋には食事が、地下には粗末ながら寝床(流刑地を思えばスイートルームだ)が、用意されているのを見つけ、 はて? と疑問に思いながらも、ありがたく拝借することにした。 値打ち物の銀食器をフトコロに入れたい欲を押さえつつ、少々の食い物を腹の中に詰め込む。
 もしかしたら俺以外にも、こんな境遇の奴がいるのかもしれない。
 とりあえず自由の身になったのだから、この地でどうにかする方策を考えることにした。
 そのうち何とかなるだろう。


 村役場から出ようとすると、人の好さそうなな帝国軍人に呼び止められた。
 世間話がてら、この土地の情報を聞き出すと、「この土地は他所者が歩きにくい土地だ」とのこと。 どこでもそうだろう。
 俺が「気をつける」と言うと、帝国軍人は「この地を自由に歩ける保証は要らないか?」と言葉を返す。 ノルド族であるゆえ、帝国で居心地の悪い思いをした俺は「自由に歩ける」という言葉に心惹かれた。

 帝国軍人は「カイアスという人物に届け物をしてもらいたい」と、事も無げに言う。
 俺の頭の中には「厄介事」の警報が鳴ったのだが、オケラの俺にとってはちょっとした使いで貰える駄賃が魅力的で、一も二もなく引き受けた。
 カイアスとやらは「生きていれば」バルモラという街に住んでいるらしいのだが、正確な居所は分かっていないらしい。 (やれやれ。)
 俺は、「保証はできんよ。」と言いながら、彼に渡す書類の包みと書き付けを受け取って、村役場を出た。


 セイダ・ニーンは、海に囲まれた小さな漁村である。
 海の音は絶え間なく聞こえ、歩いている人間は原住民のダークエルフがほとんどだ。 しかし、やはりここも帝国の土地である。 帝国の護民兵が辺りを警備している。

 小柄な(白い)エルフが、俺に近付いてきた。
 ニコニコしながら、「村役場から出てきたのを見たんだけど」と言う。
 俺が「ああ」と気のない返事をすると、「……実は」と声をひそめた。
 ファーゴスと名乗る彼は、帝国に魔法の指輪を強奪されたらしい。
 ああ、帝国軍ならやりかねないな、と、思いつつ懐にある指輪に手をやった。
 この指輪は、村役場のカゴの中に隠されていた物で「治癒の力」を持ったシロモノだ。 「皇帝の命を受けた俺サマの為に用意されたモノ」と解釈して、くすねてきた。 使えなくても叩き売れば、少々の銭も入るだろう。
 しかし、今さら帝国に対する恩も無い。 銭のアテもある。
 ファーゴスに指輪を返すと、大喜びだった。
(その姿を見た俺は、俺の土地に伝わる、魔法の指輪に魅入られた小人の話を思い出して、ちょっと苦笑した)
 ファーゴスはこの親切を村中に、特に商人たちに話して、貴方の恩に報いると騒ぎ立てた。
 「もういいから」 と、彼をやさしく押しのけて村の中を歩き始めた。


 村のほとんどを占めるダークエルフ達は、面と向かって俺を「他所者 Outlander 」と呼ぶ。 先住民である彼ら(彼女ら)は、ヴァーデンフェル以外から来た者は全て、帝国人を含めて「他所者」と呼んでいるようだ。
 俺のような流れ者には慣れているらしく、「アライルのよろず屋」に行くと良い、と助言してくれた。

 「アライルのよろず屋」は、船着き場を兼用した店だ。
 店の親爺とおかみさんは、愛想のいいダークエルフで、要り用な物は ── 情報も ── 小さな村ながら沢山用意している。
 後のことを考えて、少ない銭の中から刀 ── これがあれば大抵のことはできる ── と、軽めの鎧を調達した。
 値引きの交渉をしたが、親爺はガンとして受け付けない。 小人のファーゴスの「恩」とやらは、どこにも伝わっていないようだ。 俺はまた苦笑した。


 さて、懐具合も寂しくなってきたので、バルモラへの届け物を持って行くことにする。
 地図を見ると、バルモラはセイダ・ニーンから街道を北へ行った所だ。
 俺の足なら1日か2日で着くだろうが、慣れない土地であまり冒険をするものじゃあない、と、解っている。
 使いを頼んだ帝国軍人の話によると、道中、夜盗や怪物がいて危険だから、陸の船とも言える「足長虫 Silt Strider 」に乗ってゆくがよかろう、とのこと。
 村の近くに船着き場……いや、「虫着き場」を見つけて、若いダークエルフの船頭と交渉する。

 「バルモラまでなら15だね、15ドレイク。 安いよ。」
 安くはないな。 ……少なくとも、今の俺にとっては。
 先ほどの買い物で、懐の硬貨は不安になるほど軽い音を立てている。
 後のことを考えた買い物が全然後のためになっていなかった。 そういえば故郷でも同じような事をしていたっけか。
 「良い商売を。」 路銀のアテを考えながら、「虫着き場」から離れた。


 金が、ない。
 手前の持ち物は、ほぼ売っ払った。
 人様のモノに手をつけるのは、俺様のプライドが許さない。
 もしその気になったとしても、そこらをのし歩いている帝国護民兵の強さを、この身で試す気は毛ほども無い。 (彼らはとてつもなく勤務に忠実で、腰の大剣を使うことに「まったく」ためらいは無いのだ)

 少々心許ない刀と鎧で街道を歩いてゆくか……、と考えながら村のはずれをブラついていると、いくらかのキノコが目に付いた。
 一応は俺も、本草学を学んでいる まじない師だ。 すぐにこれらが薬の素になるものだと気が付いて、採り始めた。
 小さな沼の中にも、ちょいと珍しい薬草が生えていたので、腰まで泥に浸かって採りまくった。
 薬効の記憶はあいまいだが、たしか毒にはならねえハズ。


 フム。 これを売り払えば、少々の路銀はできるだろう。
 夕暮れも迫ってきた海岸を歩いていると、………石が動いた。
 脚もある。 こりゃ、ここらに棲んでいる泥蟹 Mud Crab だ。

 あたっ! 襲ってきやがったよ、コイツ。 カニの分際で。
 火の玉のまじないを使えば一発で…………………
 いや、刀を使えば一撃で……………
 …………………………………………………。
 (ぜー ぜー ぜー) 以外と、堅かった、な。
 だが所詮はカニだ。 「食肉」になっていただこう。
 でも、この傷は、ちょっと人には見せられねえなぁ。
 村人「おや、その傷、どうしました?」
 俺「ええ、ちょっと『カニ』に。」
 ……黙っていよう。

 メモ : ここらのカニはきょうぼうだ


 村に着くと夜も更けていた。
 護民兵はうさんくさそうな顔をして、松明を俺の顔にかざす。
 「こんな夜更けに、どちらまで?」
 ほっとけ。
 護民兵を避けて よろず屋に入ると、まだ煌々と灯りがついている。
 店の親爺に薬草を見せると、思っていたよりも高い値で引き取ってくれた。

 この金をバルモラまでの路銀にするか。
 ちょいと傷も痛むので、村役場の地下にある寝床を使わせてもらおう。
 明日の朝一番に、セイダ・ニーンを発つ。

 どっと今日1日の疲れがでて、俺は深い眠りについた。




◆ 種月17日 (2日目)

 明け方、長足虫の背にゆられてバルモラへ向かった。
 この巨大な長足虫、遠目にはまるで大きな樹のように見えるが、当然ながら生きている。 時々、身体を揺らし、くぐもったうなり声を上げる。
 座る所はちゃんとくり抜いてあって落ちる心配はないのだが、いかにせん「海の上の船」じゃあない。 へっぴり腰で座っている俺を振り返りながら、若い船頭は「食いやしませんよ」と笑った。

 速いもので、昼前にはバルモラに到着。
 バルモラは、オダイ川をはさんだ大きな街だった。 建物は全体的に丸みを帯びた石造りで、ある種、「帝国的」ではない。

 さて、カイアス探しだ。
 彼の居所は「サウス・ウォール」と呼ばれる場末のクラブで尋ねろ、と、あの帝国軍人は言っていたな。
 道すがら人に尋ねようと思ったのだが、通りは静かで人影はまばらだ。

 橋のたもとでやっと人を見つけて、サウス・ウォールの場所を聞き出した。
 そのかわりに、「バルモラの行政長官は不正な利益を上げている」とやらのグチを聞くハメになった。
 さらに話を聞いていると、帝国軍のヴァロという強者(つわもの)が、何とかって砦にこもって不正を暴くために立ち上がったそうだ。
 いいとも。 どんどん立ち上がっちゃってくれ。
 俺は日銭を稼がにゃならん。


 迷路のように入り組んでいる路地で迷ったが、クラブ「サウス・ウォール」を、その名前の通りバルモラの南外壁の近くで見つけた。
 オーナーのクロサイウスは一見すると気障な伊達男だが、ちょっとした人物で「裏の顔役」といったところ。 なるべくなら敵に回したくないような男だ。
 カイアスの居場所を訊ねると、しごく丁寧に教えてくれた。

 「俺はね。」 会話が商売の話におよぶとクロサイウスは言った。
 「こう見えても麻薬は扱わない。」 ほう。 昔気質なんだな。
 「取り引きするのは美味い酒と食い物。 中でも名酒クロコダイル……あの絶品はもう一度拝んでみたいもんだ……。」
 酒か、酒なら俺も大好きだ。 その名酒は探し出して、持ってきてやる。
 中身が余っていたら、の話だが。


 クロサイウスによると、カイアスはサウス・ウォールから少し上った所に部屋を借りているらしい。
 簡単な道順を聞いて出ていったのだが、……… 道に迷った。
 バルモラの街は入り組んでいて、路地へつながる階段かと思えば家の二階につながっており、家の二階へと続く階段かと思えば上の路地へと………。
 同じ商家の二階に3回ほど迷い込んだ頃、陽も傾きかけてきた。
 方向音痴のケがある俺には、ちょいと困った事態だ。

 気分を落ち着けて、いったんオダイ川沿いに出ることにした。
 夕暮れのオダイ川の風景は美しいものだった。 空はすみれ色で、対岸の街並みは灯りがともり、巡回している護民兵の松明もチラチラと光っている。
 「よう、兄弟。」
 あまり兄弟にはしたくない人相の男が、気軽に声をかけてくる。
 「よう」 友人のように声をかけられたら、知らない男でも友人のように言葉を返すのは下町のルールだ。
 「食いっぱぐれてるなら、オレたちの『党 Tong 』に入らねえか?」
 ……ヤクザの勧誘かい。 奴は「党」の「高邁な目的」を訥々と弁じている。
 その気もなかったが、「食いはぐれたら、頼むよ。」とお茶を濁して、橋の上にチラと目をやった。 橋の上の護民兵が、こちらをジッとうかがっている。
 奴も、あまり護民兵と仲良くなりたくないようで、俺からツイと離れた。

 「ここらに住んでいると思うんだがなぁ……。」
 バルモラの塔が見える階段を上ってゆくと、小ぎれいな家があった。
 えい、近所なら知ってる奴もいるかもしれない。 道を聞こうと扉の前に立つと、小さな表札が出ていた。
  『カイアス・コセイズ』
 ビンゴ!  やっと辿り着いたが、これなら最初からクロサイウスの手を煩わせることはなかったか。


 カイアスは体格のいい壮年の男だった。
 人の好さそうな彼は、あっさりと俺を部屋に招き入れた。
 下宿している部屋は、大抵の独り身の男がそうであるように、とっちらかっている。 机の上には御丁寧にもスクーマ(麻薬)のパイプだ。
 どうやら俺のお使いの相手はヤク中のオヤジらしい。
 まあ、いいさ。 と、書き付けと書類の包みをこのオヤジに渡した。

 ヤツは書き付けをサッと読み下すと、包みの封を切って書類に目を通した。
 顔を上げたカイアスの眼は、さっきとは打って変わって厳しいものだった。
 「礼を言う。」 カイアスは言った。
 「私はカイアス・コセイズ。 帝国秘密諜報組織『ブレード』の長としての命を皇帝陛下から受けている。」

 へ?!
 意味を理解しかねて眼を白黒させている俺に向かって、カイアスはさらに言葉を続ける。
 「『ブレード』への加入を、心から歓迎するよ。 マジーム。」
 ちょちょちょちょちょちょっと待った。 何が何して何となってるんだ??

 カイアスは、けげんそうな顔をして、運んできた書き付けを俺に渡した。
 人の手紙は読むもんじゃ無い、と思っている俺は、書き付けに一度も目を通していなかったっけか。
 だが、書き付けを読んで、俺の目はまん丸になった。
 『この者マジームを、カイアス局長のもとへ送る。 云々。 無事に行き着いたら組織の一員として迎え入れて欲しい うんぬんかんぬん………』
 なにーーーーーっ!?
 ………………あの帝国軍人、ハメやがったな……。
 こりゃ、テストを兼ねたスカウトだ。

 この後、薄汚い部屋でカイアスと延々と話し込んだ。
 よーく考えてみりゃ、「ブレード」への加入はそう悪い話じゃない。
 「ブレード」に対しての「義務」は無い。
 それでも帝国領内での「保証」はある。
 半ば強制的だったので腹も立ったが、とりあえず「了承」することにした。

 この「ブレード」って組織の人間は、ヴァーデンフェルの各地で密かに活動をしているらしい。
 カイアスは数人の団員を名を挙げて、「彼らはきっと、君の力になってくれるんじゃないかな。」、と微笑んだ。
 団員の数名は、ここバルモラにも住んでおり、なんとあのセイダ・ニーンにも一人いるという。 こりゃ驚きだ。

 その後、カイアスの見識の広さは並々ならぬものであると解る。
 俺は「ここ」、モロウィンド州・ヴァーデンフェルの状況を根ほり葉ほり訊ねまくったのだが、ほぼ全てのことをまるで自分の庭の事のように把握している。
 5つの「グレート・ハウス」と呼ばれ、昔からこの土地に根ざしているダークエルフの一族。 各種ギルド。 帝国の信仰集団「帝国教」、皇帝直属の私兵集団「レギオン」、そして諜報組織「ブレード」。 様々な集団がこの地で絡み合っているようだ。
 先ほど川辺で話した男の言っていた「党」も、ただのヤクザではないらしく、鉄の掟を持った秘密結社らしい。
 「だが。」 カイアスは続けた。 「我々は、その内幕まで把握しているわけではないよ。」

 話に区切りがつくと、何百枚もの金貨をこちらによこした。
 「これは当座の金だ。 好きに使うといい。」
 こりゃ、駄賃にしちゃあ、でかい。
 「ただし。」
 やっぱり、ただし、が付くか。 と、苦笑い。
 「君には『冒険者』になっていただきたい。」
 「君は一介の冒険者となり、ギルドか教団に加入するんだ。 そこで訓練をして地位が上がったら、また顔を見せて欲しい。」

 フム。 ちょっとばかり、この依頼を頭の中で反芻する。
 どうやら彼は、俺を使ってギルドの内幕や、知られていない情報を手に入れたいようだ。
 俺はどの組織にも属する気は ── 既に入った「ブレード」以外には ── 無かったし、帝国の中枢に直接関係する組織の手先になることにも、抵抗がある。
 だが、どうせ流れ者を続けていれば食いはぐれる。
 どっちにしろ、どこかのギルドで仕事をもらう方が、実入りは良いだろう。
 そのギルドとも金での契約だ。 情報を誰かに話したとしても、俺の良心はまったく痛まない。
 ここはちょいと打算を働かせて、「オーケイ」と依頼を受けた。

 さらに俺の心を動かしたのは、カイアスの人物だ。
 この、スクーマ中毒の軍人くずれに見えるオヤジには、人に「協力したい」と思わせる何かがある。
 そう──、先ほど部下達の話をしたときの、優しげな口ぶり。 彼は部下を信頼しており、部下も彼を信頼しているのだろう。

 帰り際、隠すように置いてあった、ぶ厚い書物を見つけた。
 さっぱり内容が解らないページをめくって「これは?」と聞いたら、「ちょっとね。」と照れたように笑った。
 簡単に博覧強記となったわけではないらしい。


 外に出ると、夜も更けていた。
 街を歩いていると、厳めしい格好をした護民兵が松明をかざして言う。
 「こんな時間に、どちらへ?」
 ……どこの護民兵も同じようなもんだ。

 とりあえず、小さな荷物と小さな用事を残してあるセイダ・ニーンへ戻ることにする。
 俺は「長足虫」の背に乗って、バルモラを発った。




◆ 種月18日 (3日目)

 セイダ・ニーンに到着したのは、夜明け前だった。
 灯りが恋しくなったので(そしてフトコロも温かくなったので)、まずは よろず屋に向かう。
 「ようこそ。」「いらっしゃい。」 親爺とかみさんが声をそろえた。

 やはりこの よろず屋は、なかなか大した品ぞろえだ。
 カイアスからもらった金貨(数えると200枚だ!)を使い、「荒事」に備えて武具を一式揃えることにした。
 「この鎖かたびらは帝国製だな。」 俺は、どう見ても帝国軍の装備であるとしか思えない鎧を手にとって、親爺に尋ねた。
 気前の良い客を前に親爺は饒舌だった。 「ええ、あまり大きな声じゃ言えませんけどね、 帝国の護民兵が……、支給された装備を売っぱらって小銭をかせぐんですよ。」
 正規軍人ならまだしも護民兵の賃金なぞ、食うのがギリギリくらいの微々たるもんだろう。 俺にゃ、飲み代や故郷への土産代を稼ぎたい、と考えるヤツらを責めることはできない。
 戦争屋の帝国製なら品質は折り紙付きだろう。 「これをもらおう。」
 金貨で、しかも言い値で払う客に、親爺はホクホクだ。 (いや、単に俺が値切りベタなだけだが)

 少し変わった盾と肩当てを見つけた。 堅い割に驚くほど軽い。
 見たところ、革をなめしたものとは、ちょっと違うようだ。
 「親爺、こりゃ何でできているんだい?」 親爺は即座に答えた。 「キチンですよ。」 「キチン?」 「ええ、キチン。」
 よくは解らないが、いい具合の物だったので、これも購入した。
 (後で判ったのだが、コレは、あの、泥蟹の甲殻だった。 うげぇ。確かにあの、刀を通さない殻は、鎧に適当だ。)

 武具を見るのも飽きて、雑貨をながめていると懐かしい物を見つけた。
 「こりゃぁ、『乳鉢』じゃないか。」 占い師の下で薬草を混ぜ合わせていた頃、よく使ったもんだ。
 「ええ、ここらにゃ沢山、薬草が生えているもんでね。」 親爺の言葉に俺はうなずく。 「時々やってくる まじない師の方々が、買いなさるんですよ。」
 そりゃいい。 薬草も混ぜ合わせて「魔法の薬」を作れば高値で売れるし、長旅にも安心だ。
 手持ちの金も少なくなってきたが、これは元がとれるだろう。 多分。


 買った品々を確かめながら親爺と世間話をしている途中、俺は先ほどの言葉を思い出した。
 「そういえば親爺さん、『まじない師の方々』が時折やってくる、って言ってたよな。」 「ええ。」 「最近、やって来ないのかい?」 「いいえ?」
 親爺は不思議そうな顔をして、言った。 「旦那。 二階にいる方々にお会いしてないんで?」
 おいおいおい。 この店に二階があったことも知らなかったよ。
 人様の家の中は、なるべくウロつかないことにしているもんでね。
 「会ってない。」
 「二階は茶屋を兼ねた船着き場の窓口でしてね、旦那のような……………ええっと『冒険屋』さんが何人か居りますよ。 遠慮せずに、どうぞ。」
 たはッ。 ちっとも気が付かなかったさ。
 「うん。 じゃあ、会ってみるかな。」
 えへんえへんと咳払いをしながら、俺は階段をかけ上った。


 いきなり、若い帝国人とぶつかった。 「失礼した。」 俺は非礼を詫びたが、若い帝国人は返事ともつかない言葉をモグモグとつぶやいただけで、俺の姿も目に入っていないようだ。
 この男は深い瞑想をしているのだ ── そう考えてこの場を立ち去るのが一番良いことだと解ってはいるのだが、持ち前のお節介が俺の行動を優先した。
 「どうかしたのか?」

 「僕の名はリスカー。」 藁にもすがりたい気分だったのだろう。 人の好さそうな若い帝国人は、見も知らない俺に話し始めた。
 彼は、大事な金をファーゴスという男にだまし取られたそうだ。 「金貨200枚だよ! いや、金額は問題じゃない。 この中には僕の婚約者に贈る指輪の代金も入っていてね、そう、彼女によく似合う指輪があるんだよ……」 俺は、のろけ話へ脱線しそうな話をあわてて止めた。

 ………待てよ。 ファーゴス?
 「なあ、そいつはエルフか?」 俺が訊ねると、リスカーは相槌をうった。 「しかも小柄、と?」 リスカーはブンブンと頭を大きくタテに振った。
 ファーゴスか。 奴の話はみんな嘘っぱちなんだな。 ……ってえことは、俺の指輪も……。
 「あいつを知ってるの?」 「ちょっとな。」 俺の笑顔は凄い形相になっていたのかもしれない。 彼はちょっと腰を引いた。 「と、とにかく」
 「あいつはまだ金を持っているはずだが、証拠はないから護民兵にも突き出せない。」 いかにも。
 「力を貸してくれたら、そのお金の一部を進呈するよ。」
 その話、乗った!

 「あいつが金を隠す場所を、見つければ話は早いんだけど。」
 なるほど、そいつを見つけて頂戴すればいいって寸法か。
 いいとも! 一日中、奴に張り付いて隠し場所を見つけだしてやる。
 「いや、あいつは敏感なやつでね。 僕もそうしたけど、すぐに気付かれてまかれちゃったよ。 真夜中にでも、うんと離れて見張るしかないんだけど……」
 真夜中に、うんと離れて、ねぇ。
 「高い灯台の上からでも、見張るしかないかな。」 独り言で、リスカーはつぶやく。
 灯台か! そりゃいい考えじゃないか。
 ………んじゃ、後は自分で頑張れよ。 俺は降りる。
 「ま、待ってくださいよ。 ぜひ貴方に見張りを頼みたいんです。」
 自分でやれば、金を損することないだろうに。
 特に問題も無さそうな仕事なので、俺は改めて引き受けた。


 リスカーとの話に夢中で気付かなかったが、二階には他の人間もいて、以外と賑やかだった。
 美しい女性が、面白そうにこちらを見ている。
 「ハイ。」 彼女の方から声をかけてきた。
 俺は狼のように素早く近付いて話しかけた。 「一緒にお茶ですか?」
 「船よ、バカ。 どこか行くの?」
 もちろんここは船着き場である。 彼女は受付の女性だった。
 船に用事はないが、俺は彼女に用事がある。 仕事の話にかこつけて、ちょいと、彼女と雑談をする。
 「私? エローン。」 彼女に名前を訊ねると、あっさりと教えてくれた。 (この島の人間は大抵そうだ) エローンという名に聞き覚えがあるが、俺はセイダ・ニーンに知り合いなぞ、いない。

 ……そうだ。 『ブレード』のカイアスおやじが挙げた部下の中に、セイダ・ニーンのエローンという名もあったっけか。
 「そう。私も『ブレード』。」 彼女は俺が慌てるくらいにあっさり肯定した。
 どうやら『ブレード』という言葉は、この島にまったく浸透していないようだ。 彼女の言葉に反応する者は皆無だし、彼女自身『ブレード』の名を出して平気で話している。 完全な秘密諜報部隊じゃなかったらウッカリ者の大バカ集団だ。 (いや、もしかしたら、そうなのかもしれないが。)
 彼女は『ブレード』の団員としての協力は惜しまない、と、申し出たが、船賃の値引き………と、お茶の誘いは、あっさりと断られた。

 二階の他の人間は、俺と同じような風来坊たちだ。
 同じまじない師であるバトルメイジ Battlemages は寡黙な男だったが、腕は立つようだ。 呪文や格闘の師匠も時々しているらしい。
 「そういえばな。」 いかついバトルメイジは言った。 「ウワサによると、『力ある指輪』をあっさりだまし取られたバカ者がこの村にいるそうだ。 知っておるか?」
 ………とほほ。 俺がその「バカ者」だよ。
 「ほう。」 俺は、相づちを打って、そらっとぼけた。


 二階の幾人かと話して外に出ると、夜が明けていた。
 ペテン師ファーゴスの見張りは、暗い夜になってからだ。
 時間はまだる。 いいかげん疲れているので、夕方まで寝ることにする。
 ふわぁ。

   *        *        *

 村役場の寝床から身を起こすと、夕刻も近かった。 俺は灯台に向かった。
 村の灯台は石造りの高い建物で、てっぺんの灯りが絶えることはない。
 人の出入りは自由だ。 村の者が交替で火を絶やさないようにしているのだろう。

 崩れかけた石の階段をおっかなびっくり登り、一番上へ辿り着く。
 てっぺんは、えらく風が強くて、聞こえるのは風の音だけだ。
  へ へ へーーーーーっくしょん!!
 ううっ寒い、ここで一晩中見張るのかい。 リスカーが自分でやりたがらない訳だぜ。
 辺りを見回すと、セイダ・ニーンが一望できる。 海に沈む夕陽は絶句するくらいにキレイだ。 夏とはいえ、陽が沈むと冷え込みははげしくなってきたが、まだ雨が降らないだけマシってもんだな。

 そんなことを考えていたら、雨が降り始めた。
 ………かんべんしてくれよ、おい。
 雨は絶え間なく落ちてきて身体を濡らし、俺を相当みじめな気分にさせる。
  (がち がち がち) うー、ファーゴス殺す、リスカーも殺す。

 俺はかなり努力して、気持ちを見張りに集中させた。
 ここからは村の連中の動きが一目でわかる。
 おっと、ダークエルフのはねっかえり娘が、木の下で護民兵と会っているぜ。 お? あの爺サマは、こんな時間に海岸を散歩か。
 ………いけねえいけねえ。 俺はノゾキじゃねえんだ。

 夜も更けてきた。 雨は上がって、雲間から星も見え始めた。
 ………お? ありゃあ、ファーゴスだ。
 人目を避けるようにして、ウロチョロしていやがる。 おいおい、あまりにも動きが怪しすぎるぜ、田舎のペテン師さんよ。
 俺は気付かれないように、そっと身体を低くした。

 奴はあたりに人影がいなくなると、溜池へ入っていった。
 ……なるほど、あそこの中じゃあ、人も探さないだろう。


 よし! 隠し場所は見届けた。
 灯台を駆け下りて外に出ようとすると、いきなり横から声をかけられた。
 「こんばんは。」 俺はおったまげて、飛び上がった。 灯台に人がいたなんてちっとも気付かなかったのだ。
 彼女(そう、女性だ)はヴェドラーノ。 おばさん、ここに住んでいるらしい。
 まずかったな。 さっき勝手に、腹が減って途中にあったパンをいただいて、足元を照らすための松明を拝借したんだ。
 「いいんですよ。 灯台の中は、自由にお使いなさいな。」 そうは言ってくれたのだが、ちょいと心苦しい。
 俺は、親切な御婦人に礼を言って外に出た。


 灯台を出るなり、俺は後頭部に一撃を食らった。 暗くて相手は見えない。
 しまった! ファーゴスに気付かれたか!?
 刀を抜いて薙ぎ払うと、ガツンと手応えを感じた。 この手応えは……。
 泥蟹だ。 シャクシャクと牙も鳴らしている。
 驚かせやがって。 俺は盾で押さえ込んでから、刀を思い切り叩き付けた。
 もちろん、こいつの行く末は食肉だ。

 メモ : やっぱりここらのカニはきょうぼうだ


 ふぅ、と一息ついてファーゴスの隠した場所へ向かう。
 お、あるある。 金貨がひぃふうみぃ……相当あるな。 コイツはリスカーの分。 (そしてその中のちょっとは俺の分。)
 おや、見覚えのある指輪が。 おおっと、こりゃ、俺がだまし取られた「治癒の指輪」じゃないか。 ついているな。
 しかしファーゴスも抜けたところのある奴だ。 「雄ガモを全て1つのカゴに入れる」なんて上等のペテン師は絶対にやらないもんだ。
 俺は全てをひとくくりにして懐へ入れる。 カラッポの隠し場所を見たときのファーゴスの表情を想像して、俺はニヤリと笑った。

 リスカーに金を渡すと、大喜びだった。 「ありがとう! ありがとう! ぜひ、あなたを友と呼ばせてください!」 ここ2〜3日、やけに兄弟やら友やらができるな。
 ちらりと横を見ると、やはり面白そうにエローンがこちらを見ている。
 今の俺にとって必要なのは、何もしない友よりも役に立ってくれる「銭」だ。
 遠慮なくリスカーから礼金をいただいて、俺は立ち去った。

 へーーーっくしょん!!




◆ 種月19日 (4日目)

 俺は、昨日手に入れた乳鉢を使って、薬作りに勤しんでいた。

 キノコや薬草を採っては薬効を思い出し、混ぜ合わせる。
 不器用な俺は幾らかの薬草をダメにしながらも、「治療薬」と「水上歩行薬」を何本か作り上げた。
 「治療薬」は旅のお供に使うとして、「水上走破の術」を心得ている俺に「水上歩行薬」は無用の物。 こいつは、よろず屋がちょっとした値段で引き取ってくれた。
 ついでに「毒薬」も出来ちまったが、この店の親爺は喜んで買い取った。
 (需要はある、ということかね)


 変わった草花はないか ── 。
 あちらこちらを探し回っていると、怪しげな洞窟を見つけた。
 入り口は木戸で堅く閉じてあり、見るからに、怪しい。

 俺は、セイダ・ニーンで聞いたウワサを思い出した。
 近くで悪党共が、密輸品の水揚げをしているらしい、と。

 ちょっと危険だが、腕試しがてらに悪い奴を退治して、中の品物はガッポリ。
 こりゃあ、ウマイ話だ。
 俺は、火の呪文を準備してから、刀と盾をかまえた。
 そっと、扉を開ける。

 扉が怒鳴るように大きな軋む音を立てた。
 中に人がいたら、俺の侵入は筒抜けだろう。
 案の定、人相の悪い男が、おめき声を上げながら棍棒を振り回して、飛びかかってきた。
 足元は細い段々で、戦うには足場が悪い。
 あやうく転げ落ちそうになりながらも、火の呪文を何発か喰らわせてから、刀で叩き斬る。
 お次は?! と構え直したが、ここにいるのはコイツ一人だったらしい。

 「治癒の指輪」で傷を治し(さっそく役に立つとは思わなんだ)、辺りを見回す。 ここは洞穴の小さな室で、奥に続くと思われる木戸があった。
 死体を探ると、鍵を見つける。 充分な収穫だ。

 奥への木戸を開けると、水音のする洞穴だった。
 そっ、と忍び込む。
 「誰だ!」 誰何の声。 さっそく見つかったかい。
 ローブを着た男が まじないの印を切ると、火の玉がスッ飛んできた。 うひゃっ! 盾でよけたが、少々火をくらった。
 俺の火の呪文はもっと近寄らないと効き目はないし、正直に白状するが俺は腕の良いまじない師じゃない。
 だが、呪文ってものは手で印を切らにゃならん。 俺は素早く男に駆け寄り、横から斬りつけた。
 怒り狂った魔法使いは何発か火の玉を俺に喰らわせたが、何とかかわしながら斬りつけ、屠った。
 ふぅ。 ちょいと危なかったな。 俺も焼き鳥寸前だ。

 「死ね!」 ガツンと衝撃が走る。
 慌てて物陰に隠れると、木の階段の上で、可愛い顔立ちのダークエルフの娘が弓をかまえ、乱射していた。
 狙いはかなり正確だ。 俺様の命が危ない。
 女を殺すのは気が進まんが、仕方がない。 渡り廊下へ飛び上がって駆け寄り、斬り倒した。 南無。


 奥には、たくさんの木箱が積み上がっていた。
 中身は相当な密輸品だ。
 上等の服に装飾品、食い物、スクーマと呼ばれる麻薬まである。
 さらには、ムーン・シュガーと銘打ってある粉。
 ほっといても帝国の行政官に押収されてしまうので、しっかりと俺が保護しておくことにした。 (もちろん、俺のために)
 麻薬は俺の主義じゃないが、薬の材料になるかもしれん。

 木でできた危なっかしい階段を登ってゆくと、またも木戸がある。
 中にはいくつかの人影。  鍵を開け、中に飛び込む。

 中の連中は、俺をボーッと見ている。 襲ってくる気配はない。 ここらでは珍しい、トカゲ人のアルゴニアン族と、豹頭のキャジート族の男共だ。
 よく見ると、連中の足は鎖でつながれている。 しかも、施錠のまじないがかけられている、凶悪なものだ。
 彼らは、奴隷として連れてこられたらしい。
 何てこった! あいつらは奴隷売買までしてやがったのか。

 「あんたは?」 彼らはドンヨリとした目で俺を見ながら訊ねた。
 「時々、正義の味方。」 俺は、彼らの鍵を外しながらむっつりと答えた。
 自由になれる、という事態が段々と頭にしみてくると、彼らは驚喜した。
 口々に俺に礼を述べ、故郷の一族に俺のことを伝えると言う。
 「こちとら、まだ密輸品の運び出しがあるからな! 早く帰れよ!」
 そう言いながら階段を駆け下りると、俺は水路に転げ落ちた。


 この洞穴には海へつながっているらしき水路がある。
 恥ずかしくも落ちて沈んでゆく途中に、黒い影が見えた。
 いったん水面に出ると、皆が心配そうにこちらをのぞき込んでいる。
 「早く帰れ、って言ってるだろうが!」

 大きく息を吸って潜り、進んで行くと、黒い影は骸骨になったホトケさんだった。 南無南無。
 ほう、サビもせずに軍刀が残っている。 もしかしたら、ここに乗り込んで返り討ちにあった帝国軍人で、死体を放り込まれたのかもしれんな。
 ………息苦しくなってきた。 推理ごっこなぞしている場合じゃない。

 ごぼごぼ う、どっちから泳いできたんだっけ、俺。
 ぐばばば い、いかん、混乱して方向音痴に磨きがかかった。
 げべべべ い、息がくるしい。

 …………………………………。
 (ぜー ぜー ぜー ぜー ぜー) げほげほ。 死ぬかと思った。

 お、水底からちゃんと軍刀は持っていたな。
 錆びちゃいないし、切れ味も抜群そうだ。 俺の愛刀にしよう。
 よし! おまえを「沈没丸」と名付けよう!
 ……………やめた、縁起でもねえ。

 俺は、戦利品をえっちらおっちらと担いで、セイダ・ニーンへ戻った。

   *    *    *

 戦利品をさばく為、さっそく よろず屋へ向かう。

 おっと、その前にヤバい麻薬は隠しておかんとな。
 えーと、ここにゃ貸部屋もねえし、そこらに置いといちゃバレちまうし。
 ………そうだ、村役場のカゴに隠そう。
 見つかっても、役人の責任になるしな。

 よろず屋に(あぶなくない)品々を売ろうとしたら、親爺は血相を変えた。
 「旦那、これはいけません。 うちは堅気の店なんですから。」
 何かマズいか? と聞くと、親爺はムーン・シュガーを指さした。
 「こりゃ、スクーマの材料ですよ。 勘弁してくださいな。」
 そりゃ知らなかった。 てっきり金平糖の材料とでも思っていたよ。

 ムーン・シュガーも村役場にコソッと隠し、改めて よろず屋へ入った。
 上等の洋服(女物だったので俺にゃ用はない)や、上等の杯を引き取ると、親爺は「良い品が入った」と上機嫌だった。

 俺も小金が入った。
 さて、次は何処へ行くかな。

(2002/ 6/17)

 日記に、間違いがあった。
 酒の名前「クロコダイル・ブランデー」は「サイロディーリク・ブランデー Cyrodiilic Brandy 」の間違い。
 酒の名前を間違えるとは、俺様一生の不覚だ。
 「アライルのよろず屋」に船着き場がある、と書いたのは俺の大いなる勘違いで、スカウトのエローンによる各地の案内情報だった。
 俺としては情報だけではなく、エローン自身にスカウトしてもらいたいものだが、そうもゆかないらしい。

(2002/ 8/11)

(続く)


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