「竜の群れ」イメージ・ノート



 これは、いつか夢に見た風景。

        *        *        *

 私はギルドの魔道師で
 宿舎で惰眠をむさぼっていた。

 ある朝(といっても、もう陽は高かったが)仲間にたたき起こされた。

 そう、遠くの街で、何かが起こっている。
 昨日、そう聞かされて、明朝、みんなで発つことになっていたんだ。
 寝過ごしたのだ。

 私は急いで小さな銀の錨(いかり)を持ち、階段を駆け下りる。
 それを使い、ちょいと助っ人を呼び出す。

 私の力は、過去の人物を引きずり出すこと。………それは「過去見」ともいう。
 過去へと通じる「穴」を開け、歴史上では死んでいるはずの人物を引き上げて、
私の助っ人として契約を交わすのだ。

 朝一番に、危機に陥っていた戦士2人を、過去につながる「穴」からひきずり
だし、命と引き替えに「契約」をする。
 その2人をつれて、皆の待つ広場へと走った。
 ご同様に寝過ごしたらしい私のお仲間も走っている。

 外が騒がしい。
 「出るなー!!」 ………?
 ?何だい? 空を見上げる。

 ……………竜だ。 竜の大群。
 出来事(ハプニング)が、向こうから……自らやってきたんだ。

 「もう、こうなったら防ぎようがない。街の人間をつれて逃げよう。」
 ギルドの長老がつぶやく。

 1頭だけでも会いたくないのに、空を埋め尽くすくらいの竜など相手にしてい
られない。

 頭の上を、小ぶりの青い竜がかすめ飛ぶ。
 バカにしてやがるんだ。
 白く美しい列塔にも、竜たちは群がっている。

 俺たちは、なすすべもなく、あてもなく、逃げた。

 山を越えて逃げるしかない。
 山の庭園に入る。
 そこを、街の人々も、パニックを起こしかけながら逃げている。

 ………地面が割れた。
 地面の中にも、潜んでいやがった。

 土が、竜の形に、めりこむ。
 その次はわかる。 「死」そのものの竜が出て来るんだ。
 その割れ目から、とてつもない大きさの竜だと、すぐわかった。

 ギルドの仲間が、ただ、呆けて見ている。
 あほっ、のみこまれるぞっ。
 奴のマントを引っ張って引きずって行く。

 あ……、女の子が、竜の頭が出て来るであろう所へ飲み込まれてゆく。
 俺は、なすすべもなく見つめていた。

 目の前に、土をのせた翼がもちあがる。
 逃げようが逃げまいが、俺たちの運命は、みな同じだ。

 恐ろしくも美しい翼を見ながら
 淡泊な心で終末を感じた。

        *        *        *

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